アイヌの星伝説(5)ニサッサオッ・ノチウ 

絵と文 表正彦 Ⅰ.金星の見かけ上の明るさは変化しますが、明るさの最大値はマイナス4.87等――1等星の約170倍――です。 地球から見ると、金星は明け方と夕方にのみ観測できます。 明け方に見えるのが「暁の明星」で、夕方に見えるのが「宵の明星」です。 アイヌは前者を「nisat-sawot nociw ニサッサオッ・ノチ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

アイヌの星伝説(4)ウナルペクサ・ノチウ 

絵と文 表正彦 昔の日本人は鷲座のα星 (アルタイル)を「彦星:牛飼い」と呼んできました。そして、鷲座のβ星(アルシャイン)とγ星(タラゼド)を「 牛飼いのお供」と 呼んできました。 いっぽう、アイヌ人は鷲座のα星を「ウナルペ(老婆)」と見てきました。そして、鷲座のβ星とγ星を兄と弟と見てきました。 実は、…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

アイヌの星伝説(3)イユタニ・ノチウ 

絵と文 表正彦 イユタニ・ノチウは、アイヌがオリオン座の三ッ星(δ星・ε星・ζ星)に対してつけた名称です。 で、その意味は「物をつく木のような星→杵星(きねぼし)」です。 この名称の分布地は、北海道の大部分です(宗谷・名寄を除きます)。 「杵」……と言うと、皆さんはどんな杵を思い浮かべるでしょうか。 杵はその形状か…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

アイヌの星伝説(2)ポロ・ノチウ 

絵と文 表正彦 北極星。 この星を近文・名寄のアイヌは「ポロ・ノチウ」と呼んできました。宗谷のアイヌは「ポロ・ケタ」と呼んできました。 一般的には「ポロ」は「大きい」と訳され、「ノチウ」と「ケタ」は「星」と訳されます。ですが、「ポロ・ノチウ」「ポロ・ケタ」を「大きい星」と訳すのは、どうかと思われます。ずば抜けて大きくは…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

アイヌの星伝説(1)ウライチャシクル・ノチウ

絵と文 表正彦  アイヌは、豊かな想像力を持った、素晴らしい民族です。 彼らは、天の川を「ペツノカ(川の形)」と呼んできました。 天の川の暗黒部分を「イチャン(鮭・鱒の産卵穴)」と呼び、天の川に入っている射手座の星々を「トサペウシケネウ(双頭の大鱒)」と呼んできました。 さらに、天の川の近傍でV字を描くヒアデス星団を…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

上川アイヌの星暦(3)

上川アイヌの星暦(3) 表正彦 著 5.月建の考案と伝播 「月建(げっけん)」という言葉があります。これは、北辰(北極星)を中心に天空を十二等分し、日没後、斗柄(北斗七星の柄の先:ζ星→η星)が指す方角から各月を名づける技法のことです。この技法を考案したのは誰でしょうか。 わたしは、夏の時代の賢人ではないか、…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

上川アイヌの星暦(1)

上川アイヌの星暦(1)                               表正彦 著 1.上川アイヌの北斗七星 上川アイヌは、江戸時代の終り頃まで北海道の上川盆地に住んでいた人々とその子孫です。 彼らは、北極星のことを「ポロ・ノチウ(大切な・星)」、その周りをま…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(54)極夜

横内正彦-著  54. 極夜 2月上旬―― 南極点ホテルは消えつつあった。大部分が解体され、使えそうな物は南極点基地に運ばれていた。南極点診療所にもカウチや装飾品や電気製品などが運ばれていた。 診察室や病室の雰囲気は、がらりと変わった。より明るく、より美しくなったのだ。 もっとも、それを眺めているひまは、シラセにはなか…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(53)マインド・コントロール

横内正彦-著  53.  マインド・コントロール 1月の下旬、フリードマン警部補の来訪があった。彼は、南極点診療所にいたシラセ医師とミラー区長に対し、このようなことを語った(手帳を見ながら)。 「あのさあ、南極点の事件の捜査に関すること、簡単に伝えておくよ。 まず、2000年6月下旬のトーマス・ヤマカワ変死事件につい…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(52)ヨブの受難

横内正彦-著  52. ヨブの受難 1月2日の午後、多くの人が――南極点ホテルの宿泊者たち、マクマード基地の警官たち、被疑者たち、遺体袋にいれられた者たちが――南極点基地をはなれた。そして、航空機でマクマード基地にむかった。 南極点基地のシラセは、 「嵐が去った……これで楽になる」 と感じた。 殺人事件に関するナゾが…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(51)もうひとつの殺人事件

横内正彦-著  51. もうひとつの殺人事件 その後、シラセと王署長は南極点診療所の病室にもどった。そこにはミラー区長とワインハウスがいた。 王署長は肘かけ椅子に座るとすぐに、自分の判断を口にした。 「諸君、吾輩はこう判断した。テラ・ノヴァの指導者バードとスカイは、たび重なる越冬によって精神に異常をきたした可能性がある、…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(50)聖十字領域

横内正彦-著  50.聖十字領域 「デューク・バード越冬隊長――」 と、丸椅子に腰をおろしていた王署長が、抑揚の乏しい口調で呼びかけた。 「あなたの語録を拝見した。独創的なところが多々あって感心した。一番感心したのは、【聖十字領域】の提唱だ」 「聖十字領域ですか――!」 とバードは、いくぶん声をうわずらせて言…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(49)真の三位一体

横内正彦-著  49.真の三位一体 「ドクター、警部補。お邪魔しますよ」 急にそんな声が聞こえ、ドアの開く音がした。 シラセが振りかえると、左脇にぶ厚い赤い本をはさんだミラー区長が見えた。 シラセはひょいと立ちあがり、今まで座っていた丸椅子に手のひらを向けた。そして、 「さあ、ミラー区長。どうぞ!」 と言った。 …
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(48)主の再臨

横内正彦-著  48.主の再臨 「よろしいですか。シラセ先生、それからフリードマン警部補――」 と鉄格子越しにバードが言った。 「8月1日の夜、マルメラードフがわたしのもとにやって来て指導を求めました。わたしは、このように告げました。 『ミハイル・マルメラードフよ。超正統派のユダヤ人は、神殿崩壊記念日に至るまでの9日間…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(47)問題発生

横内正彦-著  47.問題発生 「言うまでもないことですが、7月4日は米国の独立記念日――」 とシラセは笑みを浮かべながら言った。 「米国人にとっては愛国の日です。この日、エリントンは極点塔に星条旗をかかげ、南極点基地の皆さんをご招待したのではないでしょうか」 「あたっています――」とバード。「その日の午後6時…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(46)確執

横内正彦-著  46.確執 「シラセ先生。2000年の5月には、どんなことがあったでしょうな」 と、バードが言葉を入れた。 「5月ですか――」 とシラセは言って、またもやカレンダーを見た。 「5月14日は母の日で、5月29日はメモリアル・デーでした。マルメラードフは何色のカーネーションを用意したでしょうね」 「赤で…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(45)復活

横内正彦-著  45.復活 「ヒント。2000年の南極点滞在期間」 とスカイは両目を細めて言った。 「2000年の南極点滞在期間――?」 とシラセは聞きかえした。それからこめかみに人さし指をつきたて、 「あなた方は、ずっといましたね。南極点ホテルの従業員も、ずっといたようですね。ヤマカワは別ですが……」 「マルメラ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(44)裁くこと

横内正彦-著 44.裁くこと 「ああ――」と、シラセは右手で左胸をおさえながら嘆いた。「あなたがたは、なんてむごいことをしたんでしょう」 「むごい――?」と、スカイが鼻にたてじわをよせながら吐き捨てるように言った。「どこがむごいのさ」 「お仲間を無神論者と決めつけ、あざむき、狂わせたことです。なんの権限があって、…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(43)パラダイスという名の地獄

横内正彦-著  43.パラダイスという名の地獄 1月3日午前10時49分、生物棟アイソレーション・ルーム―― 「おい、俺も仲間に入れてくれよ――」 シラセの背後で、そう言ったのはフリードマンだった。フリードマンは持参した丸椅子のひとつをシラセのそばに置き、 「さあ、ドクター。座ってくれ」 と言った。 「や、警部補。…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(42)再生派キリスト教

横内正彦-著  42.再生派キリスト教 1月3日午前10時44分、生物棟アイソレーション・ルーム―― 「あなた方はなぜイスラム教徒を敵視しているんですか」 とシラセは、鉄格子の向こうにいるスカイに聞いた。 「コーランの5章に、こんなことが記されてる。マリアの子・イエスは預言者にすぎず、神ではない……なぜなら人間の母…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(41)南極点ベイビー

横内正彦-著  41.南極点ベイビー 1月3日午前10時39分、生物棟アイソレーション・ルーム―― 「隊長が言わないなら、あっしが言うよ。いいかい?」 スカイがバード隊長の左肩をつかんで言った。 バード隊長はその手を払いのけ、 「好きにしなさい」 と言った。ついで、毛布をつかみ、寝てしまった。 「ドクタアア――」…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(40)南極のハルマゲドン

横内正彦-著  40.南極のハルマゲドン 1月3日午前10時8分、生物棟―― そこには白くて長い廊下があった。 向かって右側にはトマト・小松菜・レタスなどを育てるためのグリーン・ルーム(LED水耕栽培室)があり、向かって左側にはモヤシとシイタケを育てるためのダーク・ルーム(水耕栽培用暗室)があった。そして突きあたりには、…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(39)テラ・ノヴァ

横内正彦-著  39.テラ・ノヴァ 「ドクター……ドクター・シラセ、目をさまして!」 その声に導かれ、シラセは両目を開けた。近くにミラー区長の顔があり、遠くに王署長の顔があった。二人とも杭のようにつっ立っていた。 「ああ、ミラー区長と王署長……」 とシラセはつぶやいた。 「ドクター・シラセ、調子はどう?」 …
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(38)深夜のお茶会

横内正彦-著  38.深夜のお茶会 「各自、自由に飲んでちょうだい――」 キャスターつきの回転椅子を楕円形のガラス・テーブルの横まで転がしてきた区長が、テーブルの上の物――カップ&ソーサー、ティー・バッグ、砂糖入れ、ネコ型の魔法瓶など――を指さして言った。 「お湯があるから、あたたかい飲み物なら作れるわ」 「ねえ、区長…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(37)シラセと署長の見解

横内正彦-著  37.シラセと署長の見解 「はい――」 とシラセは自分のメモ帳を見ながら、おごそかな口調で言った。 「支配人によると、表示時刻の複製者は中央監視室の技師長トーマス・ヤマカワだそうです。私は、トーマス・ヤマカワが2000年の夏至の頃に複製したのではないか、と見ています。ちなみにヤマカワはその年の6月の下旬、…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(36)区長の見解

横内正彦-著  36.区長の見解 「王署長。『百聞は一見にしかず』って言うでしょう? 南極点基地がかかえている問題をお見せします――」 王署長の横に立ったミラー区長がそう言って、焦げ茶色のハンド・バッグの中から小さなガラス玉を取りだした。 「ここに赤・青・黄色のビー玉がひとつずつあります。これらの玉をPタイルの上にそっと…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(35)シラセと隊長の見解

横内正彦-著  35.シラセと隊長の見解 1月2日午後10時5分、捜査本部―― ふたたび王署長の横に立ったシラセは、捜査員たちに向かって、 「皆さんに、ご報告します。先刻、南極点ホテルに行ってまいりました。このホテルは、殻(から)をたたき割られたウニのように無残な姿をさらしていました。でも、支配人が機敏に動いてくれたおか…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(34)犯行の現場と時刻

横内正彦-著  34.犯行の現場と時刻 「えーと、ですね――」 とシラセはフリードマンの顔を見ながら、ゆっくりと言った。 「犯行の現場は南洋園の居間のカウチの上……犯行の時刻は2000年12月31日の午後11時半頃ではないかと思います。そう思う根拠は写真――南洋園の居間のカウチにエリントンが座っている写真――です」 「…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(33)密室事件について

横内正彦-著  33.密室事件について 「たいへん申しあげにくいことですが――」 と、王署長のそばに行ったシラセは警官たちに対して言った。 「私は警部補らの見解に反対です。私は、支配人、ボーイ、アベルソンらを知っています。彼らの言葉にウソがあったとは、どうしても思えません。私は、彼らの言葉を信じるところからはじめたいと思…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(32)警官たちの見解

横内正彦-著  32.警官たちの見解 捜査報告――長々とした説明――を終えたフリードマンに対し、王署長が抑揚のとぼしい低い声で言った。 「警部補。犯人の目星はついているのかね」 「は、はい、署長――」 とフリードマンは両目を剥きながら声をうわずらせて言った。 「俺は、いや、私は、支配人のファン・カルロス・エッチェパー…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(31)診療室から病室へ

横内正彦-著  31.診療室から病室へ シラセとスカイは、「急患でしょうか」「十中八苦、急患だよ」などと言いながら診察室のドアを開いた。 だが、彼らを待っていたのは区長と来訪者、それから隊員たち(デューク・バード、ジョージ・クロカワ)と警官たちだった。 来訪者は黒い口ひげとあごひげを生やした東洋人で、侏儒(こびと)だった…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(30)南緯90度酒場

横内正彦-著  30.南緯90度酒場 南緯90度酒場というのは愛称だ。 実態は、5人がけのテーブルが2台あるだけの、セルフ・サービスのコーナーだ。 シラセはスカイに誘われ、このコーナーに立ち寄った。 スカイが、持参した赤ワインと給湯器のお湯でホット・ワインを作ってくれた。それをシラセは、持参した白いカップで飲んだ。 …
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(29)エリントンの亡霊

横内正彦-著  29.エリントンの亡霊 1月2日午後4時45分すぎ―― 「どうしました」 と白衣姿のシラセは、診察室の丸い椅子に腰をおろしている二人に聞いた。 一人はアルゼンチン司祭のオスカル・アルディレス。もう一人は天文学者のアーロン・スコットだった。 長衣を着たアルディレスがゆっくりと口を開いた。 「ドクター・…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(28)悪夢

横内正彦-著  28.悪夢 1月2日午前5時12分―― 突然、シラセの部屋のインターホン・チャイムが鳴った。 ベッドで眠っていたシラセは起きあがり、首を左右に振った。 いやな夢を見た、と思った。拳銃を手にしたフリードマンが出てくる夢だった。 まだチャイムが鳴っている。 シラセは壁時計を一瞥(いちべつ)し、 「うへ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(27)南極点診療所

横内正彦-著  27.南極点診療所 南極点診療所は入れ子構造になっている。 最も外側にあるのは厚さ約40インチ(1メートル程度)の雪氷である。その下に、東西に長くのびた、スチール製のカマボコ型の通路があり、その一郭に、オレンジ色の金属パネルでできた医療棟がある。そしてその中に、厚さ約24インチ(60センチ程度)の断熱材でく…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(26)雪上車に乗って

横内正彦-著  26.雪上車に乗って 「ドクタアア・シラセ。ドクタアア・シラセ」 誰かが耳もとで呼びかけている、でも、誰だろう、とシラセは考えた。 その誰かは「ドクター」を「ドクタアア」と発音していた。つまり、普通は口の真ん中で発音するストレスのない「ア」を「アア」と強めに発音していた。 「ドクタアア・シラセ。あんた、…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(25)螺旋階段

横内正彦-著  25.螺旋階段 2階の螺旋階段の前でシラセは軽い悲鳴をあげた。螺旋階段から鼠色の煙が噴きだしていたからだ。 シラセは立ちすくんだ。 「ああ……螺旋階段が煙突と化している」 とつぶやいた。すると、こんな声が聞こえてきた。 あなた、非常口はないの? ダイアナの声だった。久しぶりに聞いた妻の声だったが、違…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(24)エレベータ乗り場の前

横内正彦-著  24.エレベータ乗り場の前 午後4時4分―― 「このエレベータは駄目だ。位置表示灯が消えている」 そう言ってフリードマンは3階のエレベータ・ドアに鉄拳をくらわせた。直後に手を振って、 「いたたたたた……」 と言った。 「警部補、螺旋階段がございます」 と支配人が言うと、 「分かっている」 …
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(23)丸天井

横内正彦-著  23.丸天井 「煙……?」 とシラセは言いながら丸天井と極点塔に目を向けた。 八方のルーフ・ウィンドウ(屋根窓)から八条の白い光が降りそそいでいる。 その光が集中する部分に極点塔がある。 そのつけ根から煙が――薄紫色の細い煙が――あがっている。 シラセはギョッとして息を飲んだ。 まさか、アレじ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(22)日付変更壁のマジック・ミラー

横内正彦-著  22.日付変更壁のマジック・ミラー 3階の日付変更壁のかたわらにはフリードマンがいた。 「もう、いないだろう、と思っていました」 とシラセが率直に言うと、 「事情が変わった。もう一日、ここにいる」 とフリードマンは怒ったような口調で言った。 「あの……警部補。何があったのでございますか」 と支配人…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(21)支配人室

横内正彦-著  21.支配人室 その後、シラセはフリードマンとともに中央監視室を出た。南洋園に行くと、鑑識官たちと支配人がいた。 「ドクター・シラセ。ここでお別れしよう」 とフリードマンが両目を細めて言った。 「また、お会いできますか」 とシラセは両眉をあげて聞いた。 「近々、南極点ホテルに来る」 「私は明日、南…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(20)容疑者

横内正彦-著  20.容疑者 午後2時8分―― 「ところで警部補――」 と中央監視室の肘かけ椅子に座っていたシラセが、隣席のフリードマンに話しかけた。 「警部補はどなたを疑っていらっしゃいますか」 「そ、そんなことは――」 とフリードマンは両目を剥いて言った。 「口が裂けても言えないっ!」 「あの……一般論…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(19)それを食べた人と食べなかった人

横内正彦-著  19.それを食べた人と食べなかった人 1月1日午後1時50分すぎ―― 「皆さん。私用がありますので、この辺で……」 「じゃあ、あたしも……」 ムフタールとマルメラードフがそう言って、礼拝室の前から立ち去った。すると、 「俺もそろそろだな」 とフリードマンが言いだした。 「フリードマンさん、何かある…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(18)自販機コーナーと礼拝室

横内正彦-著  18.自販機コーナーと礼拝所 1月1日午後1時33分―― 「フリードマンさん。扇形ホールで何をしておいでですか」 と、近づいてきたムフタールが右手を高くあげて言った。左手には大きな買い物袋をさげている。 「単なるよもやま話です」 と、カウチに座っていたフリードマンはそっけなく言った。その後で、 「ム…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(17)アデリー・ペンギン

横内正彦-著 17.アデリー・ペンギン 1月1日午後1時2分―― 突然、誰かが中央監視室のドアを激しくたたいた。すぐに、 「チャーリー、俺だ。開けてくれ!」 という声が聞こえてきた。フリードマンの声だった。 ドアの近くで資料を印刷していたシラセは、ちょっとうろたえた。 「はいはい」 とアベルソンは繰り返し言いなが…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(16)インターネット検索

横内正彦-著 16.インターネット検索 1月1日午後0時21分―― 「あらかじめ言っておきます」 と、中央監視室の肘かけ椅子に腰をおろしていたアベルソンが、隣席のマルメラードフとシラセに対して言った。 「僕、騒がしいのが苦手なんです。特にパソコンに向かっているときは静かにしていてほしいんです。お二人にはですね、インター…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(15)ノン・ドッグ

横内正彦-著  15.ノン・ドッグ 1月1日午前11時58分―― 「やあ、チャーリー!」 中央監視室から顔を出したアベルソンに対し、フリードマンが大きな声で呼びかけた。「George Murray Ellington.Non-Dog」と書かれた紙を差しだして、 「この紙が展望台の石碑に貼られていた。大至急、ジョージ・マ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(14)極点塔

横内正彦-著 14.極点塔 1月1日午前11時33分―― 「ドクター、警部補。この上に展望台と極点塔があります」 と、螺旋階段をのぼる直前にマルメラードフが言った。 階段の手すりには焦げ茶色のオークが使われ、ステップには赤いカーペットが敷かれていた。象牙色の壁には、古い船舶用窓をまねた、丸蓋付きの丸い照明が取り…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

最果ての国(13)ロス海属領

横内正彦-著 13.ロス海属領 「ねえ、ドクター。警部補と支配人は、いつ頃、来るの」 と、マルメラードフが太平洋園の居間のテーブルの上にピロシキとケーキを乗せた小皿を並べながら、ゆっくりと言った。 テーブルの前の椅子に腰をおろしていたシラセは、 「いつ頃でしょうねえ。1階の非常口とゲートを見てから、と言っていましたから…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more